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理玄異聞録 第8話「木鷽」|余録 旧紙断簡
一|御容体書 四月十八日若旦那様御容体、先月よりさしたる変わりなし。右手足、力入りにくく、歩行には介添えを要す。問いかけへの返答、時に遅れあり。 同じことを重ね…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第10章 夕顔 ――拾いて、返す
数日後、二人は再び鳴海屋を訪れた。 応対に出たのは、前と同じく治助だった。 部屋へ上がる前に、理一郎は庭の奥へ出て、離れ跡の位置を確かめた。 それから二人は前…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第9章 主観所見 ――預け、預かる
一息ついたあと、異紀が帳面を見直して言った。「次、わしやね」 理一郎は、木鷽へ目をやり、それから異紀を見た。 これまで、管理した条件で作用を受けたのは理一郎…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第8章 三福 ――先、追わず
蓋はひとまず外したままにした。 木鷽は北北西を向いて、観測台の上に据わっている。 異紀は筆を置いた。 「茶ぁ飲む?」「もらう」 戸口から爪の音がした。 三福…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第7章 目隠し ――判定、預ける
分館へ戻った頃には、とっくに昼は回っていた。 理一郎は鞄を机の脇へ置いた。中を開けるでもなく、観測室へ足を向ける。 「お茶くらい飲めば?」 異紀も荷物を下ろし…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第6章 離れ跡 ――向き、辿る
数日後。 店の前では、治助がすでに待っていた。 二人の姿を見ると、暖簾の脇から出て頭を下げる。 「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」 店の間には、朝か…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第5章 弁当 ――包み、二つ
理一郎は席を立った。「湯を取ってくる」 卓上の湯呑みを取り、異紀の脇の一つも盆へ載せる。土瓶も添え、部屋を出た。 鉄竈の前まで来ると、聞こえるのは湯の鳴る音…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第4章 将棋 ――手、動く
朝の陽は、すでに分館へ続く石敷きまで差していた。 玄関まであと数歩というところで、植え込みの下から三毛が出てきた。 理一郎は足を止めた。 「……三福」 三福は…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第3章 発語 ――抑え、緩む
理一郎の言葉を書き留めようと、異紀が帳面へ戻りかけた、そのときだった。 異紀の袖が観測台の縁をかすめきらぬうちに、背後から低い声が落ちた。 「離れるな」 帳…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第2章 嘴 ――実物、残る
午後になると、理一郎の机は、開いた医書で埋まっていた。 流行病の症例集、精神の変調を扱った本、黴や菌類による中毒を記した訳書。 午前の回付書にあった「平素なき…
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理玄異聞録 第8話「木鷽」|第1章 回付書 ——件、届く
窓際で、頁が一枚返った。続いて、綴じ本の背が机にこつりと触れた。 昨日まではなかった音だった。 理一郎は帳面の欄を端まで埋めてから、顔を上げた。 久遠異紀は…