※ こちらはThreadsの投稿をまとめて取り込んだ記録です。もともとリプライだったものも一件ずつ並んでいるため、前後がぶつ切りになっていることがあります。ご了承ください。

Xで、AIにキャラクター同士の対戦を書かせる企画の話を見かけました。
私は普段、AIと一緒に小説を書いています。
その遊びのひとつとして、自作キャラクター同士に将棋やトランプ、麻雀などをさせることがあります。
勝敗そのものより面白いのは、
キャラごとの性格で、見ている場所や選ぶ手が変わるところです。
今回は、近代幻想小説『理玄異聞録』の二人、久遠異紀と志岐理一郎に、一局指してもらいました。
将棋としての正確さは未検証です(笑)。
盤面に人柄が出る遊びとして、作者は横でお茶を一服しながら眺めています。
以下は、AIに「異紀と理一郎で一局指してみて」と投げて、そのまま返ってきたものです。
盤が置かれると、異紀はまず駒箱の蓋を裏返した。
そこへ歩を一枚、音もなく置く。
「先、もろうてえい?」
理一郎は駒台の端をそろえていた。
指先が盤の縁を一度なぞる。
「好きにしろ」
異紀は笑わなかった。
ただ、歩を七筋へ進める。
先手・久遠異紀。
後手・志岐理一郎。
一局目
異紀は、初手から軽かった。
▲7六歩。
理一郎は少しも迷わず応じる。
△8四歩。
盤の上に、まず道が二本できる。
異紀はそれを見ているようで、理一郎の手元を見ていた。駒を置いたあとの指の離れ方、袖が盤に触れない角度、次の手を考える前に一度だけ視線が下がる癖。
▲6六歩。
△3四歩。
▲6八銀。
△6二銀。
理一郎は堅い。
というより、乱れがない。
一手ごとに、盤の端から順に空気を締めていく。
駒がばらつくのを嫌うのではなく、ばらついた時に戻る場所まで先に作っている。
異紀はそこで、角をじっと見た。
▲7七角。
理一郎の目が少しだけ細くなる。
駒音は変わらない。
△4二玉。
王が動く。
理一郎の陣だけ、書類棚のように静かに整いはじめた。
異紀は頬杖をつきそうになり、途中でやめた。
代わりに、歩を一枚つまむ。
▲5六歩。
△3二玉。
▲4八銀。
△5二金右。
▲5七銀。
△3三角。
盤面はまだ穏やかだった。
けれど、異紀の左手が、駒台のない場所を一度だけ撫でる。
何もないところを確認する手つきだった。
理一郎はそれを見た。
見ただけで、何も言わない。
中盤に入る少し前、異紀がふいに端へ手を伸ばした。
▲9六歩。
理一郎の眉間に、薄く線が入る。
攻め筋としては急がない手。
ただ、急がない手をこの位置で置く意図が、すぐには見えない。
理一郎は黙って受ける。
△9四歩。
異紀はそこで、香車を見た。
飛車ではない。角でもない。
盤の端でまっすぐにしか進めない駒を、妙に長く眺めている。
▲6五歩。
理一郎の手が止まった。
やっと中央が動く。
だが、遅い。遅いのに、妙にいやな場所で火がついた。
△7七角成。
▲同銀。
角が消える。
盤の呼吸が変わった。
理一郎は持ち駒の角を見ず、まず自陣を見る。
崩れはない。王の脇も固い。金銀の連結もまだ保たれている。
△8五歩。
飛車先が伸びる。
理一郎らしい手だった。
変な誘いに乗らず、自分の道を押す。
異紀はそこで、駒台の角を取った。
▲4六角。
盤の端に、薄い刃が差した。
理一郎はすぐに返さない。
左手で袖口を少し押さえ、盤上の斜線を追った。
角は王を狙っていない。
金でもない。
飛車の肩、香車の頭、そして先ほど伸びた端の歩へ、細い道が伸びている。
「……妙なところへ置く」
声は低かった。
異紀は角から目を離さない。
「ここ、涼しいきね」
理一郎の指が、金に触れかけて止まる。
△7二飛。
飛車を横へ逃がす。
堅い。正しい。
だが、盤の端にほんの少し隙間が空いた。
異紀は、待っていたように香車を進めた。
▲9五歩。
△同歩。
▲9三歩。
理一郎の視線が、端に落ちる。
歩の一枚。
取って済むようにも見える。放っておくと香が走る。
△同香。
駒音が少し強くなった。
異紀はそこで、銀を上げる。
▲6四歩。
△同歩。
▲同角。
角が中央へ出た。
端へ意識を寄せていた理一郎の陣に、中央から光が入る。
理一郎はすぐ崩れない。金を寄せ、銀を締め、王の逃げ道を作る。
△6三歩。
▲4六角。
角は戻る。
何も取らない。
理一郎の口元が動きかけた。
言葉は出ない。
異紀は、その黙り方を少しだけ眺めた。
終盤は、理一郎が優勢に見えた。
飛車の筋が通り、異紀の銀が一枚浮いた。
玉の囲いは薄く、理一郎の攻めはまっすぐだった。
△8六歩。
▲同歩。
△同飛。
▲8七歩。
△8二飛。
きれいに押して、きれいに戻る。
無駄がない。
異紀の指先が、盤の外で一度だけ膝を叩いた。
音はほとんどしない。
▲5五歩。
中央の歩がぶつかる。
△同歩。
▲6四角。
さっきと同じ角。
今度は戻らない。
理一郎は、そこでほんの少し息を落とした。
読んでいた筋とは違う。だが、破綻はない。自陣はまだ耐える。
△5三金。
▲9一角成。
馬ができた。
端を捨てたように見せて、端に戻った。
香を失わせ、飛車を動かし、金を寄せさせて、最後に馬を作る。
理一郎は盤面を見ている。
異紀は、理一郎の横顔を見ていた。
「……」
理一郎の手が、持ち駒の角に伸びる。
△6九角。
鋭い。
今度は理一郎の方が、異紀の玉へ直接差した。
異紀のまぶたが、少しだけ下りる。
怖がった顔ではない。
むしろ、何かが来たのを確かめた顔だった。
▲5八飛。
受ける。
逃げない。
理一郎の角が盤上に残る。
異紀の馬が端から自陣を睨む。
数手、音だけが続いた。
△5七角成。
▲同飛。
△8七飛成。
理一郎の竜ができる。
ここで、普通なら理一郎が勝つ。
形はそう見える。
異紀の玉は狭い。持ち駒も多くない。
けれど異紀は、そこで王手をかけなかった。
▲5一角。
遠い場所へ、角を置く。
王に近いようで、すぐ詰むわけではない。
理一郎の手が止まる。
角の先には、玉ではなく、逃げ道があった。
そこを塞がれると、次に馬が入る。銀が寄る。歩が成る。
即座に負けではない。
ただ、理一郎がさっきまで作っていた“安全な手順”が、一枚ずつ湿っていく。
△4二銀。
▲6一馬。
△5一銀。
▲同馬。
異紀の馬が、理一郎の銀を取った。
理一郎は駒台を見た。
銀はある。角もある。攻めも残る。
だが、受けに回す駒が少しずつ足りなくなる。
異紀はそこで、ようやく王手をかけた。
▲3五銀。
理一郎の視線が盤の中央で止まる。
銀が、ぬるりと近づいている。
派手な手ではない。けれど王の肩へ、指がかかった。
△同歩。
▲4一銀。
静かな駒音だった。
理一郎の喉が、かすかに鳴る。
△同玉。
▲5二金。
金が落ちる。
盤の上で、理一郎の王が行き場を狭められた。
竜は敵陣にいる。強い。強いが、遠い。
△3二玉。
▲4一銀。
もう一枚。
理一郎はそこで、長く黙った。
駒台の上の角に指が触れる。
打てる場所を探す。
一つ、二つ、見つけては消える。
異紀は何も言わない。
膝の上で、指を組んでいる。
△2二玉。
▲3二金。
理一郎の指が止まった。
詰み。
しばらく、盤の上に音がなかった。
異紀は勝った顔をしない。
ただ、取った駒をひとつずつそろえ始める。
「……最後、竜が遠かったね」
理一郎は王将に触れず、盤の右辺を見ていた。
自分の竜が、まだ敵陣の奥で光っている。
「近づける手を、一手惜しんだ」
声は静かだった。
悔しさを言葉にはしない。
かわりに、飛車の成った位置を指先で一度だけ押さえる。
異紀は駒箱の蓋へ、歩を戻した。
「志岐さん、きれいに勝とうとするき」
理一郎の目が、少しだけ上がる。
異紀は盤を見たまま、金を箱へ落とす。
「わしは、きれいな道があったら横の草むら見る」
理一郎は返さない。
ただ、王将を持ち上げて、駒箱の中央へ戻した。
木の音が、短く鳴る。
「……もう一局なら、端は受けん」
異紀の口元が、少しだけ緩んだ。
「ほいたら、次は真ん中から行こか」
理一郎は駒を並べ直す手を止めた。
盤の上で、歩の列だけがまだ乱れている。
外で、鳥が一度鳴いた。