茨城県立歴史館
「いきもののかたち 一橋徳川家資料のどうぶつたち」に行ってきた。

べっ甲、卵、水晶、象牙……
そういう素材でできた小物が並んでいた。

理一郎は標本医だから、意匠より先に
「何で作られたのか」
「どう作られたのか」
を見そうだな、と思いながら見てました。

理一郎、最初は少し顔を寄せて、
「……厚みが、思ったより残っちゅうな」
って言いそう。

意匠より先に、
これは殻か。牙か。角か。

どこまで削って、
どこで残したか。

割れた線は偶然か、
最初から見せるつもりの構造か。

そういうところを黙って見る。

異紀はその横で、
展示札を読んでるふりをしながら、
「理一郎、花やら鳥やらは見んが?」
って軽く言う。

理一郎は息を詰める。
櫛の歯の間隔、厚みの残し方、端の欠けやすさ。
べっ甲の透け方。
水晶の中の濁り……
作られる前から素材が持っていた癖を、拾っている。

特に櫛は、装身具なのに理一郎から見ると、標本に近い気配がある。

異紀が水晶の虎を見て、
「これは、よう睨みゆう」
言いながら笑う。

理一郎は、
「……石の濁りを、目に合わせたがやろう」
と、息をつく。

……観記掛向きの展示だった。

「いきもののかたち」というタイトルも、
理一郎と異紀に似合う。
生き物そのものではなく、
人が素材を通して“生き物らしさ”を写そうとした跡を見た気がした。